南海日日新聞

危機言語サミット奄美大会に寄せて

南海日日新聞2020年02月05日掲載:島ことばの散歩道18(執筆:横山晶子)再掲載


今月22、23日に、奄美市で文化庁主催の「危機的な状況にある言語・方言サミット」奄美大会が開催される。 サミットは、2009年にユネスコが「危機言語地図」を発表し、日本から8言語(アイヌ語、八丈語、奄美語、国頭語、沖縄語、宮古語、八重山語、与那国語)が掲載されたこと、 東日本大震災により被災地の方言が危機的状況に陥いったことを契機に始まった。各地の言語保存・継承に携わる人が集まり、状況の改善を目指していく。

島ことばも危機言語の一つとして数えられてから10年が経ち、島ことばが危機的状況にあること、記録・継承する価値があるものであることについての周知は進んだと思う。 これからの10年間は「危機言語として数えられない」ことを目指していきたい。これまでの連載でも述べてきたが、危機言語の再活性化は不可能ではない。 話者がいなくなってから2千年後に復興したヘブライ語、話者の90%が70代以上になってから復興したハワイ語、最後の話者がいなくなってから、新しい話者達が復興したマン島語など、前例はある。

日本で「ことばの継承」の議論をすると、「学校で教えるべき」という話になりがちだが、学校だけに任せるのは大変である。 学校にはカリキュラムがあり、先生方も地域の出身とは限らない。時間的・人的リソースが非常に限定されている。 総合の時間は「言葉に興味を持ってもらう」には最適だが、言葉そのものを教えるには時間が足りない。 クラブ活動や土曜授業など、地域の人が主体的になって、学校という場を生かす方法を考えなければならない。

他に簡単で効果もあるのは、日常生活の中で言葉を使う機会を大量に増やすことである。 11回の連載で「たとえ本人に話しかけなくても、家庭内で方言を聞く機会があった世代は方言の理解度が高い」研究結果を紹介した。 家庭内でなくても、職場や地域で方言を聞く機会が多いので、方言が分かるようになったという話も聞く。 まずは使えるもの同士でいいから島ことばで会話をして、それをたくさん若い世代に聞かせてほしい。

もう一つ、島ことばを話せる人にお願いしたいことがある。 危機言語は「いま話す人が少ないから」危機言語なのであり、それを再活性化させるには「新しく話す人」をつくらないといけない。 その時に「あんたは何も分かってない」「あんたの方言はおかしいよ」など、若い世代の島ことばを咎める発言を出来るだけ控えてほしいのである。 若い世代や移住された方にとって島ことばは外国語みたいなもの。間違えていたら「『○○』ね」と言い直すなど、優しく誘導してくれたら「また使ってみよう」となるだろう。

私は40代・40代の方たちと話すことが多いが「本当は島ことば話してみたい」という声は意外に多い。 まだ話せる先輩方がたくさんいて、若い世代にも話したい人がいること。 その思いが上手く繋がっていけば、島ことばはユネスコの「危機言語地図」から「再活性化した言語(revitalized)の地図」に移行していけると思う。 危機言語サミット奄美大会の成功を祈る。

クラウドファンディング「いま何もしなければ」なくなってしまう琉球諸語の絵本出版プロジェクト、お陰さまで成功しました! 今夏、沖永良部・多良間・竹富・与那国島の昔話絵本をひつじ書房から出版します。(イラスト:山本史)

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