★島ことばの散歩道26

=横山晶子

◎習う方法(前編) 調べながら学ぶ

 私は島生まれでも、島育ちでもないが、大人になってから島に通い始めて、島ことばを「聞いたら分かる」「(母語話者みたいに上手ではないけれど)話せる」ようになった。島ことばは大人になってからも話せる!ということをお伝えしたいので、私自身が行った「島ことばを習う方法」を紹介したい。  外国語を習う時には、教科書を買ったり、教室に行ったりすることが多いと思う。島ことばの中には、魅力的な教科書や教室がある言葉もあるが、多くの島ことばには教材がない。それに、島ことばは集落ごとに違うから、方言集の中にある言葉が自分の学びたい言葉とも限らない。そんな時、私がお勧めするのは「自分で調査しながら学ぶ方法」である。「調査」というと固いけれど、自分で直接、話者の人に島ことばを聞きながら、学んでいく方法である。教室で学ぶより、案外こっちの方が楽しくもある。

 ◆まずは挨拶の  ことばを覚えよう

 多くの人にとって、新しい言葉を学ぶ楽しさは、会話ができたり、心の交流ができたりすることだと思う。だから、オススメは初めにコミュニケーションの言葉を覚えることだ。「こんにちは」「ありがとう」「そうですね」「また会いましょう」…、あなたが島ことばで使ってみたい挨拶(★あいさつ)や相槌は何だろう? 自分なりのリストを作ってみて、まずはそれを島ことばで何というか尋ねてみよう。

 ◆知っている単語を  増やそう

 次に、少しずつ知っている単語を増やしていこう。どんな言語も、単語を一つも知らないと話すことはできない。逆に単語を知っていれば、簡単な会話は成り立つものである。この時、ただやみくもに出てきた単語を覚えるのは効率的ではない。何故なら、単語の中にはよく使われる単語も、ほとんど使われない単語もあるからである。  「よく使われる単語」を聞くために、参考になるのが「基礎語彙(★ごい)」という考え方である。基礎語彙とは、「頭」「足」など体を表す語や「雨」「風」など自然を表す語など、人間が日常生活を送る上で不可欠な語の集まりを指す。身の回りの物事を、1つずつ島ことばで何と言うか聞いてみよう。私のサイト(researchmap.jp/akikoyokoyama/研究ブログ)にも、簡単な基礎語彙の調査票「島ことば初めの100語」を掲載したので、参考にしてみてほしい。  集落によっては、日本語にはない音があったり、どうやって書いたらよいかわからない音もあるかもしれない。分からない音に出会ったら、どうやって発音しているか聞いてみよう。そして、まずは自己流で良いので、同じ音を同じ書き方でメモしてみよう。今は分からなくても、段々と耳が慣れてくるので焦らずに。

 ◆「てにをは」を  理解しよう

 次のステップは文法だ。島ことばを学ぶには「てにをは」と呼ばれる助詞の体系を理解することが役に立つ。助詞とは「太郎が花子を呼んだ」の「が」とか「を」を指す。「太郎が花子を呼んだ」の「が」や「を」は島ことばで何というか?「船で沖縄に行った」の「で」や「に」は島ことばで何というか?…と調べていくと、基礎語彙と組み合わせて簡単な文が出来るようになる!もしピンとこない人は「島ことば、初めのてにをは調査票」も私のサイトに載せたのでご参考に!

(日本学術振興会/東京外国語大学)

えらぶむに ©2020. Photo: ARISA KASAI