★島ことばの散歩道25

=横山晶子

◎まーるーまーるーし琉球諸語

沖縄県のぎのわんシティーFMに「まーるーまーるーし琉球諸語」という番組がある。ハイス・ファン・デル・ルベさん、半嶺まどかさん、上間明さんが「まーるーまーるーし」(代わりばんこで)パーソナリティーを務め久米島、八重山、首里・那覇の島ことばで語る。話題は島ことばの文法から、ラテン語の起源、人類の言語の始まりまで多岐にわたる。日本語がまったく入らない点でも、那覇だけでなく、さまざまな島ことばが聞ける点でも、"母語話者ではない"島ことばの話者が話す点でも、とても珍しい番組である。

 ハイスさんはオランダの出身。小さい頃から、母語のオランダ語の他に、テレビをつければ英語、街を歩けば移民が話すトルコ語やベルベル語など、多言語を聞く環境に育った。大学で言語学を勉強して琉球諸語に興味を持ち、独学でうちなーぐちを習得。2012年に来日して、直接「しだびんきゃ(先輩方)」から久米島のとぅまい・やらろー(泊・謝名堂)言葉を習い始めた。

 ぎのわんシティFMの依頼が来たとき「島ことばを話す良い練習になるだろう」と思い、「島ことばの大事さを伝えたい」という志を同じくする、半嶺さん(石垣島出身で石垣・宮良ことばを学ぶ)、上間さん(ブラジル出身で首里・那覇ことばを学ぶ)に声をかけた。言語学者として久米島・那覇・沖永良部・鳥島の言葉を研究しながら、上記のラジオ番組や、「うちなーぐち勉強会」を主宰し多くの「新しい話者」を生み出すなど、島ことばの教育に携わっている。

 彼が島ことばの教育をするうえで一番大切にしていることは「劣等感をなくすこと」だという。昔は島ことばが差別の対象になったり「やなむに(汚い言葉)」と言われることもあった。そこで、まずは島ことばを話す人の中に植え付けられた劣等感をなくすことが大事である。一方で、島ことばを話さない人の中にも「〝自分たちのことば〟が話せない」と劣等感を持つ人がいる。彼らの劣等感をなくして、誰もが安心して学べるような環境を作っていく必要がある。

 もう一つ、島ことばを学ぶ人に「島ことばを習う方法」を伝えていくことも大切だという。島ことばは自然に継承されてきた言葉なので、話者は教える方法を知らない。それに、英語や日本語のように「学ぶ人」が多くいる言語と違って、話者は学習者が話す〝不完全な言葉〟に慣れていないから、時にとても厳しい先生になる。そういう地域の話者とどうやって関係を築き、言葉を学んでいくのか? その方法を探るのは、学ぶ人たち自身の課題であり、それをサポートする活動家や研究者の課題でもある。

 ハイスさんの流暢(★りゅうちょう)なうちなーぐちを聞いていると「島ことばは勉強できる言葉なんだ」と改めて勇気が湧いてくる。「まーるーまーるーし琉球諸語」は毎週木曜日の午前10時30分から、ぎのわんシティFMで放送され、過去の放送はYoutube(動画サイト)でも見られるのでぜひチェックしてみてほしい。

 ※ところでこのインタビューは、全編しまむに(沖永良部語)で挑戦してみました。二人ともたどたどしいながら、ちゃんと話し合えることに感動。島ことばを勉強中の人同士で話すのも楽しいですよ!

 (日本学術振興会/東京外語大学)

写真タイトル:Youtubeから聞くことが出来ます!

えらぶむに ©2020. Photo: ARISA KASAI