南海日日新聞

くんじゃい・しまむにプロジェクト

南海日日新聞2019年3月6日掲載:島ことばの散歩道⑦(執筆:横山晶子)再掲載


2019年2月10日、大雪予報が出た翌日、東京の国立国語研究所で「沖永良部語ワークショップ くんじゃい(国頭)・しまむにプロジェクト」が開催された。 この日は悪天候を乗り越え、沖永良部島から到着した、小学生から高校生の8人の子どもたちを含む、4組16人の家族が、島ことば継承の取り組みや、 島ことばを使って作った作品の紹介を行った。会場には在京の沖永良部コミュニティーや、言語に関心がある一般の人たち合計63人が集まり、 消滅危機言語の継承と、言語の多様性についての理解を深めた。

しまむにプロジェクトの参加者を囲んで記念撮影=2月10日、東京・国立国語研究所

このプロジェクトは、昨年度「言語復興の港」(山田真寛代表)が、知名町下平川小学校で実施した「ゆしきゃ(上平川)・しまむにプロジェクト」の第2弾である。 言語復興の港では、地域言語の再活性化と、言語の多様性の維持を目標にして活動しており「しまむにプロジェクト」は以下の3パートからなる。

  • ①小学校の夏休みの課題として、島ことばを使った作品を家族で作る
  • ②作品を島内の他の人たちと共有する
  • ③作品と島ことばを島外の人に紹介する
東京での発表は③に当たる。

イベントでは、主催者からプロジェクトの趣旨と危機言語についての説明をした後、 沖永良部島を舞台にした2連作『神に守られた島』『神の島の子どもたち』の著者である 小説家の中脇初枝さんが小説が出来た背景、そして地域に伝わる昔話の世界について語った。 村づくり推進委員の福島文子さんは国頭集落の紹介と、 月に1回開かれている「大人の方言教室」「子どもの方言教室」の活動について報告した。 そして司会が、沖永良部高校の今井優さんに移り、3組のご家族からの作品紹介が始まった。

まず「方言しりとり」を作った田代家は、島ことばによる軽快なしりとりを披露、 途中島ことばのなぞなぞもあり、会場からは「ヒント!」「○○だる!」などさまざまな声が飛び交い、盛り上がった。 「あちゃとぅ つくゆぬ やせづけ(おばあ)ちゃんと作る大根漬け)」を発表した今井家は、 おばあちゃんのレシピの説明を家族全員の寸劇で披露。お父さんの名演技に会場は笑いに包まれた。

最後に「あやとぅ やまだ(お姉さんとトンボ)」の大栄家は、 おじいちゃんから「ハジフチヤマダ(赤とんぼ)が多い年は台風が多い」と教えてもらい 「鹿児島に住むお姉ちゃんに会えないのが嫌だ」と思ったエピソードから、 さまざまなトンボの方言名、そして自然にまつわるティーチバナシを披露し、4兄弟の連携プレーに会場は和んだ。

最後は「トンボの眼鏡」を島ことばに直した「やまだぬ みーかがん」、えらぶの子守歌、国頭ヤッコが披露され、 参加者全員に、研究所所長から賞状が贈られた。懇親会では本物の「やせづけ(大根漬け)」も振る舞われ、 主催者が用意した酒もオードブルも尽きるほど、遅くまで盛り上がった。

国頭小学校で募集をする前、筆者は「本当に誰か応募してくれるだろうか?」 「昨年紙芝居、身体語彙、歌、カルタ…とやって、他にどんなことが出来るだろう?」と不安だったが、 しりとり、レシピ、ティーチバナシ…と、どの家族も目の付け所が秀逸で、 まだまだ島ことばをきっかけに生まれる作品や自由研究には無限の可能性があると感じた。 そして「今回のプロジェクトに参加したことで、島ことばだけでなく地域の昔話や島唄など、 一生追い続けられるテーマに出合えた」といううれしい報告もいただいた。

しまむにプロジェクトは始まったばかりだが、 これからも島内・島外の人が楽しみながら地域の言語や文化について考える場を作って行けたらと思う。 やにむ うだぬ しゃーぶらやー(来年も、どうぞよろしくお願いいたします)。

くんじゃい・しまむにプロジェクトの 報告書はこちらから


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