南海日日新聞

島むに絵本つくとぅんど~

南海日日新聞2019年2月6日掲載:島ことばの散歩道⑥(執筆:横山晶子)再掲載


わじわじ」「びらびら」この言葉はどんな様子を表すか分かるだろうか? 私は2010年から琉球諸語の研究をしているが、方言の研究を始めたきっかけは、方言のオノマトペ(擬音語・擬態語)の面白さに心惹かれたことだった。 例えば、冒頭の「わじわじ」は、沖永良部島で、怒りなどで体がぶるぶる震えるような感じ、「びらびら」は果物が熟れてが柔らかい様子などを表す。 標準語の感覚だと「びらびら」は何か破っているような感じに聞こえたりもするから、それが「柔らかい」意味を表すなんて衝撃だ。 そして、島や集落が違うと少しずつ言い方も変わり「わじわじ」は「わしわし」「わじゃわじゃ」、 「びらびら」は「びるびる」「びりびり」になったりする。 意味の広がりも面白い。 「びらびら」は主に「柔らかい」意味を表すが、そこから、体調が悪そうで寝込んでいる様子や、 甘えん坊の様子、子供が次々生まれる様子を表したりまでする。

このオノマトペの面白さをいつか伝えられないか?と思っていたところ、私生活で子供の出産という機会があった。 小さな子供はオノマトペが大好きで、絵本を読んでいてもオノマトペのところだけ口に出したりする。 そして、リズムさえ良ければ外国語でもすっかり覚えてしまう。 沖縄の仕掛け絵本に『おおづなひきで ちむ どんどん』という絵本があるが、 息子はこの「ちむ どんどん」が大好きで、何度も何度も読んで欲しいとせがんだ。 島の言葉を子供たちに楽しんで覚えてほしい、と思った時、オノマトペはとても良い題材ではないか?その思いが実を結び、 沖永良部島のオノマトペ(シマノトペ)絵本を作ることになった。

試作中の島ことば絵本 (※現在は完成しています。こちらよりご覧ください)

◆絵本のレシピ

まず大学院生の時に、調査で集めた沖永良部のオノマトペ(134個)から、 方言が分からない友人たちに「面白いと思うもの」を投票してもらい「アツい(面白い)」えらぶオノマトペを集めた。 そのオノマトペたちと、まず覚えてほしい島ことば「あじ(お婆ちゃん)」「あま(お母さん)」など親族名詞から、 文を作っていった。 文は「じゃーじゃー、じゃーじゃー、いきゃ し~よ?(お爺ちゃんお爺ちゃん、どうしたの?)」 「さきぬ がぶがぶ いーちゅんど~(酒が沢山入っているよ)」 「あじ、あじ、いきゃ し~よ?(お婆ちゃんお婆ちゃんどうしたの?)」 「ししぬ びらびら まさんど~(肉がとっても柔らかいよ)」のように、 一定のリズムを持つようになっている。 絵本の最後には、簡単な島むにのミニ文法解説を付けた。 また、集落ごとに少しずつ方言差があるので、発行元の「言語復興の港」のウェブページに絵だけのデータを用意した。 印刷して、自分の島・集落の島ことばを書き込めば、自分だけの島ことば絵本が出来る。

前回、島ことばペラペラフランス人・セリックさんの「島ことばに教材があれば、もっと習得は楽だった」という言葉を紹介した。 その言葉の通り、琉球諸語の現状として、沖縄の那覇方言・首里方言には魅力的な教材や絵本が多数存在するものの、 他の地域、特に奄美諸島の教材は非常に少なく、物語などの本もまだ数が少ない。 沖永良部の言葉については、教材も制作・公開中であるが(「しまむに宝箱」をご覧ください)、 島ことばに興味をもつきっかけとして、絵本や動画のような様々な媒体が増えると良いと思う。

※この絵本は、2019年3月より沖永良部島内の観光協会や商店、 インターネット(「言語復興の港」)で販売されています。 機会があれば、是非手に取ってみてください!


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